PAI潤滑性塗料とは
- 1. 概要
- PAI潤滑性塗料は、固体潤滑剤である二硫化モリブデンとフッ素樹脂をPAI樹脂バインダーに分散させた焼付タイプの乾燥皮膜コーティング剤です。特に耐熱性と耐摩耗性に優れており、エンジンピストンのスカート部はもちろんのことあらゆる摺動部にコーティングができます。特に抵抗力を下げた内視鏡用ワイヤーコーティング剤と密着性を向上させたボルト・ナット用コーティング剤、表面の平滑性を向上させ、気密性や特に高温時の耐摩耗性に優れたエンジンガスケット用の塗料などがあります。
- 2. 特長
- (1) 耐熱性、耐薬品性に優れており、グリースやオイルとの併用に適しています。
(2) 非常に滑らかで摩擦係数の小さい膜を形成します。
(3) 密着性(特にアルミ)に優れており、塗膜が剥がれ難くなっております。
(4) PAI樹脂としては低温度(210℃)で硬化します。
(5) 粘度調整(20〜4000mPas)はオーダーメイドで設定できます。
PAI潤滑性塗料適用例
- 高機能なPAI(ポリアミドイミド)樹脂に固体潤滑剤である二硫化モリブデンとPTFE(フッ素樹脂)の配合量を最適化して分散させることに成功しました。これには高度な分散技術が必要で、難しいとされているPTFEの分散に成功し、大量にPTFEを配合することができました。応用として、ワイヤーやボルト・ナット、ガスケット等が製品化に成功しております。
■ワイヤーコーティング


ワイヤーコーティングには
@抵抗力が低いことA耐摩耗性B柔軟性が要求されます。
■ボルト・ナットのコーティング
- ボルトの締付トルクを効率良くボルトに伝えるには
ボルトとナットの摩擦係数を小さくして軸力の低下を防ぐことです。専用に開発したPAI潤滑性塗料は、極めて摩擦係数が低く、軸力低下は小さく抑えられています。また、極めて密着性が高く、締付トルク190Nもの繰返し締付(5回以上)にも耐えて焼付きません。

ボルト・ナットのコーティングには高い密着性が要求されます。
PAI潤滑性塗料(スプレー用)の適用例
◆ワイヤー(LM-152A)◆
PAI潤滑性塗料の中でも特に抵抗力(摩擦抵抗)が小さいものを採用しています。
- 【特徴】
- 1. 抵抗力が小さい
- 固体潤滑剤の粒径や配合量を調整することにより抵抗力を大幅に低減しました。
抵抗力が小さいほど、ワイヤーにかかる負荷が減少し、力のロスが減少します。
- 2. 耐久性に優れる
- バインダー樹脂にPAI樹脂を採用したり二硫化モリブデンとPTFEの配合量を最適化することにより高度な耐摩耗性を実現しました。
- 3. 柔軟性に優れる
- バインダー樹脂にPAI樹脂を使用しており、可とう性に極めて優れます。
- 4. 膜厚安定性に優れる
- 優れた加工技術により、極めて高い膜厚安定性を確保し、高精度な摺動性を実現しました。
PAI潤滑性塗料(ディッピング用)の適用例
◆ボルト・ナット(LM-022AH)◆
大東潤滑のPAI潤滑性塗料の中でも特に密着性が高いものを採用しています。
- 【特徴】
- 1. 乾性皮膜である
- 完全ドライなので、従来の湿式(グリース)のようなベタつきがなく、作業性に優れています。
- 2. 焼付防止に優れる
- 特に密着性に優れた塗料で、塗膜の剥がれを抑え、高度な耐焼付性を実現しました。
- 3. 耐久性に優れる
- ボルト・ナットの繰返し締付にも耐え、厳しい繰り返し焼付テストに合格しております。
- 4. 軸力の低下が小さい
- 極めて高い潤滑性により、締付トルクを効率良く伝達させ、締付による軸力の低下を抑えます。
PAI潤滑性塗料(スクリーン印刷用)の適用例
◆エンジンピストンスカート(LM-013AS)◆
PAI潤滑性塗料の中でも特に耐久性が高いものを採用しています。
- 日本の自動車メーカーの新車の80%以上はエンジンピストンスカートにコーティングを行っており、浮動ライナー摩擦力測定試験により摩擦力の低減が実証されております。
弊社のPAIコートは、摩擦係数が小さく安定しており、その結果、非常に密着性の高いものとなっております。
新車のみならず、アフターマーケットにも対応でき、少量のコーティングから対応します。
- 【特徴】
- 1. 耐久性に優れる
- 従来のエポキシ塗料等によっては、簡単に剥がれてしまうものもありますが、当社のPAIコートはエンジン実機耐久試験により、優れた塗膜の耐久性が実証されています。
- 2. 耐熱性に優れる
- 耐熱性に優れるPAI樹脂やモリブデン、PTFEを配合することにより、従来のエポキ樹脂+グラファイト(PTFE)と比べて優れた耐熱性を実現しています。
◆バルブ摺動部(LM-035AS)◆
大東潤滑のPAI潤滑性塗料の中でも特に表面粗さが低いものを採用しています。
- 【特徴】
- 1. 気密性に優れる
- 優れた固体潤滑剤の分散技術とスクリーン印刷による塗装が相まって、非常に滑らかな(表面粗さが小さく真円度が高い)塗膜を形成し、極めて高い気密性を実現しています。
- 2. 摺動抵抗が低い
- 表面粗さが小さいことや摩擦係数が小さいことより、回転力(トルク)を低くできます。
- 3. 耐久性に優れる
- 優れた耐久性により、摺動回数による回転力(トルク)の上昇を小さくできます。
- 4. 耐油性に優れる
- PAI樹脂の優れた耐薬品性や耐油性により、グリースとの併用でも安定した塗膜を維持します。
◆エンジンガスケット(LM-035AS)◆
PAI潤滑性塗料の中でも特に耐摩耗性が高く表面粗さが低いものを採用しています。
- 【特徴】
- 1. 耐摩耗性に優れる
- PAI樹脂の優れた密着性により、特に高温での耐摩耗性に優れています。ガスケットは高温になると内部応力の高まりからガスケットが破損する場合があり、高温時のコーティング面の耐摩耗性が重要になってきます。また、エンジンの振動による摩耗からガスケットの摩耗を防ぎます。
- 2. 密閉性に優れる
- 優れた固体潤滑剤の分散技術とスクリーン印刷による塗装が相まって極めて滑らかな塗膜を形成し、高い密閉性を実現しております。
- 3. 耐熱性に優れる
- PAI樹脂の優れた耐熱性により、従来のエポキシ樹脂タイプと比べて耐熱性が高く、400℃の高温でも変色を起こしません。
エポキシ潤滑性塗料(スクリーン印刷用)の適用例
◆エンジンガスケット(LM-013ES)◆
エポキシ潤滑性塗料の中でも特に耐摩耗性が高く表面粗さが低いものを採用しています。
- 【特徴】
- 1. 耐摩耗性に優れる
- 一液性のエポキシ樹脂に、二硫化モリブデンとPTFEを最適に分散させることにより、全温度での耐摩耗性に優れています。ガスケットは高温になると内部応力の高まりからガスケットが破損する場合があり、高温時のコーティング面の耐摩耗性が重要になってきます。また、エンジンの振動による摩耗からガスケットの摩耗を防ぎます。
- 2. 密閉性に優れる
- 優れた固体潤滑剤の分散技術とスクリーン印刷による塗装が相まって極めて滑らかな塗膜を形成し、高い密閉性を実現しております。
- 3. コストパフォーマンスや加工性に優れる
- 低コストな一液性のエポキシ樹脂を採用し、優れた固体潤滑剤の分散技術を用いることにより、低コストでパフォーマンスに優れ、加工性に優れた塗料です。
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